住民監査請求の問題点

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 「 住民監査」という制度は、住民からの請求に基づいて、地方公共団体の執行機関又は職員の行う違法・不当な行為又は怠る事実の発 生を防止すること。またはこれらによって生じる損害の賠償等を求めることを通じて、地方公共団体の財務の適正を確保し、住民全体 の利益を 保護することを目的とする制度とされています。

 これを踏まえて提起される住民訴訟は、「地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として・・・裁判所に請求する権能を与え、 もって地方財務 行政の適正な運営を確保することを目的としたもの」であるとされています。

 「地方公共団体の構成員である住民全体の利益を保障するために法律によって特別に認められた参政権の一種であり、その訴訟の 原 告は、・・・住民全体の利益のために、いわば公益の代表者として地方財務行政の適正化を主張するもの」(最判昭和53年3月30 日)とされているものです。

 しかし、住民監査請求自体には法的な強制力と執行力がありません。

 これを「住民訴訟の前置条件」としても、住民訴訟自 身にとってはほとんど影響がない制度という恰好になっています。従って、この住民監査が厳正で厳粛な監査がされるかどうかは疑問が多く、時には政治家の失政の言い訳に過ぎ なかったり、同じ政治家同士が身内をかばい問題をウヤムヤにするだけの事なかれ主義が目立つとい う問題があります。

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市と事業者の争点

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  本件住民訴訟の元となった事件は、自治体が個人の自由な営業を侵害したという事例であり、憲法に定められた権利を明らかに侵害し た違法な執行でした。

 これを最終執行権限者として前市長 は行なっています。


 ただその営業権の侵害をするのに風営法の規定を「利用する」ということをやっていますので、そこが損害賠償請求では争点とな りました。

 図書館を作るとそこには学生や児童が集まります。その近隣の環境が悪ければ良好な学習環境が提供できないということで、風俗 営業法に規定がされています。

 ところが、では図書館をとにかく作ればこの種の営業をさせなくできるかというと、妨害することを目的とした図書館の設置は違 法という判 断がされるのです。

 「法に規定があるから」と、別な目的でこれを適用させようとすることは法の濫用に当たるわけです。つまり、「法の目的外の利 用は違法である。」これが最 高裁の判例です。 大学あたりではどの学部であろうと一般教養で当たり前のように学ぶ事例です。


 そうして、本件ではパチンコ屋は営業はできなくなってしまったのですが、事業者側としては市を訴えるには二つの選択がありま した。
 ひとつは、図書館を取り壊させて出店できるようにする方法。もうひとつはもはや妨害されたことが現実であり損害を受けているか らとその損 失を訴える方法です。事業者は後者を選びました。

 市は当時、この訴えに知らん顔をして図書館の設置が正当だったことを主張しています。違法な執行をしてしまったのですから、 何とか責任から逃れるよう頑張ったと言えます。これに対し、営業できなくなった事業者は自分らのみが標的 にされたと主張して争いました。


 ただ、ここで支払われた損害賠償金は前市長が支払わねばならないものです。

 「市長は違法行為を行うことがある」などという前提 は法治国家ではあり得ませんし、もしこういうことに責任が問われないのであれば、例えばいくらでも裏取引をし、賠償金を支払ったと称して市のお金を好き勝 手にすることが可能になってしまいます。

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